認知症などに対応する成年後見制度とは

2018年09月10日(月)

 

 

認知症などにどう備え、どう対応するかは大きなテーマですが

対応方法の一つである成年後見制度の基礎についてお伝えします。

成年後見制度は判断能力が不十分な人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を本人とともに支援者である成年後見人等が行うことで、本人の意思や自己決定を尊重しながら本人を保護する法律上の制度です。制度は法定後見制度と任意後見制度に分けられ、法定後見制度は、後見、保佐、補助の3種類があります。

 法定後見制度は、判断能力が不十分な本人について、本人または家族等の申し立てに基づき家庭裁判所が法定後見(後見、保佐または補佐)開始の審判をして本人の行為能力に一定の制限を加えます。そして適任者を本人の成年後見人等に選任します。成年後見人等が付与された代理権、取消権などの権限を行使することによって本人を保護し、支援する制度です。

 成年後見の対象者は認知症、知的障害など精神上の障害によって判断能力を欠く状態にあり。通常は日常の買い物も自分では出来ない方々です。これらのうち、家族や市町村長などの請求権者から家庭裁判所に後見開始の申し立てがあり、家庭裁判所が判断能力を欠く常況にあると認め、後見開始の審判を行う事によって利用が可能となります。成年後見人の候補者には信頼できる親族や弁護士、司法書士、社会福祉士などの第3者に候補者になってもらい、家庭裁判所が検討の上、職権で選任します。

成年後見人は成年被後見人(本人)の法的代理人であり、財産管理権を有するので成年被後見人がした契約などの法律行為を取り消す事ができます。法定後見人の代理権、取消権の対象となる行為は財産に関する法律行為であり、預貯金の管理などの他、介護契約なども含まれます。一方で、代理権の制限としては、居住用の不動産の処分などは家庭裁判所の許可を要すると規定されています。取消権の制限として、日用品の購入等は対象にならないと定められています。成年被後見人に対して強い立場に立つ成年後見人には善管注意義務などが課せられています。

 保佐の対象者は判断能力が著しく不十分な人で、日常の買い物程度はできるが重要な財産行為は行えない、いわゆるまだら状態の人です。保佐人は被保佐人が行う一定の財産行為につて同意権、取消権が与えられており、被保佐人は金の借り入れなど重要な財産行為をするには保佐人の同意が必要で、これを単独で行った場合、保佐人はその行為を取り消す事ができます。

 補助の対象者は判断能力が不十分な人。本人以外の者の請求により家庭裁判所が補助開始の審判をするには本人の同意が必要です。補助人の権限の範囲は同意権付与の審判または代理権付与の審判によって定まります。

一方、任意後見制度は、本人が判断能力のあるうちに誰にどのような支援をしてもらうか自分の意思で決め契約しておくという制度です。任意後見人になる人に対して将来一定の範囲で代理権を付与する「任意後見契約」を締結します。そして、判断能力が不十分な状態になった時に家庭裁判所によって選任された任意後見監督人の監督の下で任意後見人による保護、支援が開始されます。任意後見人は被後見人の生活、療養看護、財産管理に関する法律行為を行いますが権限は代理権のみで取消権はありません。

 成年後見制度の利用者は、創設された平成12年から右肩上がりで推移してきましたがここ数年伸びは鈍化しています。後見を申請する親族の立場からは「後見人が強い権限を持ちすぎる」「本人の権利を奪いすぎる」などと警戒する意見が強いことも原因といわれています。とはいえ、超高齢化社会で判断能力に問題のある人を保護支援する制度の充実は重要で、制度改正や成年後見制度を補う信託制度の整備等の対策が求められています。

 

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